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2.原型を使いましょう

 皆さんのブランドでは原型を十分に活用していますか。たぶん、その答えは、「ドレーピングしているから、あまり使わない」ではないでしょうか。

 確かに、ドレーピングには直接的にイメージを表現することができるという大きな利点がありますが、個々の力量による差が大きく、また、その個人にあっても出来不出来があって、全体として不安定であることは否めません。品質の安定化を考えるならば、ブランドごとに共通の原型を持ち、統一された展開法を実践すべきです。

 原型といっても、「文化式」あるいは「ドレメ式」に代表される平面製図による洋裁の原型ではありません。これらは、その成り立ちにおいてオーダーメードの仮縫いを前提とした大まかなものであり、品質の安定化というレベルで機能する性格のものではないからです。

 アメリカ式のパターンメーキングと呼ばれる手法をご存じでしょうか。これは、ドレーピングによって作られた原型を平面で展開するという立体的な考え方に基づいた手法で、まるで布を扱うように紙を巧みに切り開いていくさまは平面ドレーピングと言えます。私の念頭にあるのは、このようなシステムにおける原型です。ところが、合理的と言われながら、さほどには使われていないようです。

 原型を作ろうとするとき、その対象となる人台の形に忠実であろうとしますが、ウエストをタイトに作られた原型は、ダーツ移動やギャザー展開など、そのシルエットの範囲内の切り開きにはよいのですが、まったく違うシルエットを作ろうとするといろいろなところで矛盾が出てきます。そのため、シャツなど簡単な形にもかかわらず、あれこれ複雑に切り開いて至難なことになってしまいます。これでは、ドレーピングの方が早いとか、文化式の方がいいということになってしまうかもしれません。

 分かっている人であれば、臨機応変にそのデザインに近いシルエット原型をドレーピングで作成し、面倒なところはパターン展開するという、うまいやり方が出来るでしょう。

 しかしそれでは、原型がシステムとして機能しているとは言えません。私は、あれこれ複雑に切り開いて至難なことになる苦労をしながら、「展開のための原型はいかにあるべきか」と追求してきました。そして、原型かくあるべしという、一つの結論に到達いたしました。

 原型を使いましょう!と胸を張って言えるものと自負しておりますが、はたして、この声が皆さんに届きますかどうか…。